上下斜位とヨークトプリズム
2022/05/07
本日のblogの難易度【★★★★★】
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先日いらした男の子のお話です。
なんでも13歳ですが発達障害の診断を受けたそうです。
お母さまいわく、精神的に不安定で、落ち着きがないそうです。
そんな男の子の目を見てみると
他覚 | R | -3.25 | -1.00 | 13 | 29.50 | 0.05 | 0.20 | |
L | -3.50 | -1.00 | 180 | 29.50 | 0.10 | |||
R瞳孔径 | 角膜乱視 | -2.00 | 11 | 夜間矯正視力 | 夜間近視 | 追加加算 | ||
L瞳孔径 | -1.75 | 177 |
結構な近視、更に無視できない乱視があります。
しかも角膜乱視が強いこともみてとれます。
僕は乱視矯正で一番重視しているのが、
角膜の形状であり、
角膜形状の乱れにより、
角膜乱視が発生します。
ですから角膜乱視が強く出ていて
更に全乱視としてもしっかり乱視が存在する場合には
しっかり乱視矯正をする事を「僕は」推奨します。
かぎかっこ付きで僕はと書いた理由は
あくまでもこの見解は業界では主流の考え方ではなく、
むしろ乱視害悪論が世間では蔓延っています。
乱視=違和感の原因
違和感がある=クレーム多発
だから乱視は極力組み込まない、
それが業界の主流だと言えます。
主流とは誰かと言えば、大手量販店です。
日本人のほぼ8割がそこで作っているのですから、
その考え方が世間の常識だと言えます。
でも今回のケースで、発達障害と診断された
男の子は、視覚の異常から、何かしらの悪影響を及ぼした
可能性は無いのでしょうか?僕は真っ先にそこを疑いました。
ちなみに今使っている眼鏡の度数はこんな感じです。
旧度 | R | -2.04 | -0.02 | 0 | 29.00 | 0.15 | 0.40 | |
L | -2.01 | -0.04 | 0 | 29.00 | 0.30 |
乱視が一切組み込まれておりません。
勿論これでは視力も期待通りに維持出来ていません。
ぼやっとした視界を生きてきたと言えます。
僕はこれを改善しようと思い、まずは乱視の度数を組み込んだ眼鏡で
店内を歩いてもらいました。
僕「どう?歩いて気持ち悪いかい?」
男の子「ううん、大丈夫。」
この時点ではこれでいけそうな感じでした。
ところが、視力測定をすると
無意識に顎を上げてみる癖があります。
そこで
僕「顎を上げないで見える?」
男の子「ううん、見え難い。」
ここで僕はヨークトプリズムという度数の
適用を思い立ちます。
ここで簡易にメカニズムを解説します。
①顎を上げる。
②目線は遠くを見ようすれば下方に下がり下目使いになる。
③網膜の中で焦点の当たる場所が変化する。
④変化した場所で見えやすいor癖になっている。
こういった場合にはヨークトプリズムを入れると
上手くいくケースがあります。
更にカバーテストと言って、片目を隠して
交互に目の位置をチェックすると、
左目の方が下に動く癖があります。
つまり、
右目上斜位も混在しているとジャッジしました。
通常のヨークトプリズムでは
両目に同じ度数で同じ方向の上下プリズムを組み込みますが、
今回は、方向は両面共にアップ、でも、今回はアップに左右差をつけて
上下斜位も考慮したプリズム度数を組み込み作製しました。
具体的には
右アップ4△(プリズム)
左アップ5△
です。
この度数を組み込んだテスト枠で視力測定をすると
途端に顎を上げてみる癖がなくなりました。
これに色の組み合わせで体の筋反射を見ながら
色を決めてカラーレンズで提案します。
本人にも
僕「どう?顎を上げなくても見えやすい?」
と聞くと
男の子「うん。」
と満面の笑みでした。
イノチレンズ、そしてフィジカルサポートカラーと
二社とのお付き合いで僕はカラーレンズの体に与える影響を
リサーチしていますが、少なくとも僕が検査をして体の反応が
色によって変化がなかった人は、どなたもいらっしゃりませんでした。
つまり誰でも視界に入る色によって影響を受けていて、
それによって体の体幹等、筋肉になんらかの影響を与えている事が
理解できます。ただしどういったメカニズムでそれが実現できているのか、
そこがまだ解明されていないので、僕らは正直困っています。
エビデンスの無いことを科学的に証明されている事象だと
は言い切れないからです。今の段階では単なる結果論です。
いずれにしてもこのヨークトプリズムと上下斜位、
更に乱視の矯正、それに加えてカラーレンズでの調整が
今回の男の子の生活の質を改善してくれることを願うばかりです。
それではまたこのブログでお会いしましょう。