自作メガネを完成させる上で、レンズの削り・面取り工程は最も繊細で技術的なステップといえます。既製品のフレームにレンズを装着する場合も、レンズの形状やサイズが合わなければ正しく固定できず、視界のズレや不安定な装着感に繋がります。ここでは、家庭でも実行可能な手順と必要な工具を整理しながら、素人でも再現可能な加工方法を詳しく解説します。
レンズの削り方・面取りの主な工程は以下の通りです。
- レンズのマーキングと寸法測定
- 粗削り(荒研磨)による外径カット
- 精密研磨によるサイズ調整
- 面取り加工(エッジの滑らか化)
- 仕上げのクリーニング
各ステップを詳細に説明します。
1. レンズのマーキングと寸法測定
最初に行うべきは、レンズの加工位置を正確に把握することです。装着予定のフレームのレンズ部分をトレーシングペーパーなどで型取りし、レンズに油性マーカーで輪郭を転写します。ポイントは以下です。
- レンズの中心が瞳孔と合うように配置する
- 上下・左右のズレがないように、基準線を十字に記す
- フレームより0.2mmほど大きめにトレースしておく(後で微調整可)
この工程で「眼鏡レンズ加工 持ち込み」などのDIYショップと同等の精度を確保するためには、100分の1mm単位の精密ノギスを使用することが推奨されます。
2. 粗削り(荒研磨)による外径カット
レンズの大枠を削る工程では、以下のような家庭用のツールが利用できます。
ツール名 |
特徴 |
おすすめ度 |
ミニベンチグラインダー |
回転式で均一な削りが可能。市販品多数。 |
◎ |
精密ヤスリセット |
手作業での微調整に有効。音も静か。 |
○ |
Dremel(ドレメル) |
回転式マルチツール。パワー調整可。 |
◎ |
DIY加工用ホイール |
砥石ホイールやフェルトパッドが使える。 |
○ |
粗削りは、フレームの内寸より1〜2mm大きめを目安に削り、仕上げ工程で微調整することが理想です。この段階で削りすぎると、レンズがフレームに固定できなくなるため注意が必要です。
3. 精密研磨によるサイズ調整
フレームへのはめ込み精度を高めるためには、粗削り後の微調整が不可欠です。目視では確認しづらい微妙なズレも、装着時には「ガタつき」や「浮き」の原因になります。回転ヤスリやフェルトパッドを用いて、エッジ部分を均等に整えていきましょう。
以下のようなポイントに注意します。
- 左右のレンズで寸法を一致させる
- 面の角度(傾斜)を揃える
- エッジが鋭利にならないように滑らかに仕上げる
この工程では、作業中にレンズが熱を持ちやすいため、こまめに水で冷却することも大切です。
4. 面取り加工(エッジの滑らか化)
面取り(ベベル加工)は、安全性と見た目の美しさを両立するために欠かせません。レンズのエッジが角張っていると、フレームに収まらないばかりか、使用中に顔に接触して痛みを引き起こす可能性もあります。
面取りの方法としては、以下のようなテクニックが有効です。
- 角度45度で回転ヤスリを滑らせる(均一に)
- フェルトパッド+研磨剤で光沢仕上げを施す
- 表面コーティングに干渉しないよう注意して作業する
高級レンズでは多層コーティングが施されているため、加工時の摩擦でコーティングが剥がれることがあります。このため、コーティング仕様のレンズには「低速回転+水冷」を意識した作業が推奨されます。