斜視を眼鏡で矯正。
プリズムレンズという選択肢
このホームページに辿りついた皆様は、ご自身や周りの方に、きっと斜視でお悩みの方がいらっしゃるのでは?とお察しします。弊店は斜位の矯正でお客様に喜んで頂いているお店なのですが、一般の方は、まず斜位と斜視の違いはご存知無いですね。斜位とは通常殆どの方は自覚がなく、多少の斜位であればどなたにでも存在する視線のずれを指します。自覚が無くどなたにでも存在するのですから身近な体の状態を表す言葉なのですが、これほど知られていない言葉も珍しいと思います。その視線のずれの有無を一般の方がみつけるのは余程大きなずれでなくては見つけきれないのです。ですから専門の眼鏡店や一部の眼科さんの出番になります。
「え!?一部の眼科!?」
と僕が言っているのを見て驚かれますか?眼科に限らず現代医学は非常に細分化し、お医者様それぞれが専門に特化して病院の経営をしているケースが多いのですが、眼科も勿論そうなのです。白内障を専門にしていたり、レーシックに特化したり。お医者様それぞれの得意分野でご活躍されています。斜視の矯正等を広く言うと屈折矯正と言います。近視や乱視、遠視や老眼、更にコンタクトも屈折矯正ですね。実は行政の診療点数の配分は先ほど述べた屈折矯正に対して僕に言わせれば余りにも点数が低すぎるのです。その為、眼科医さんでこの屈折矯正に真剣に取り組んでいらっしゃる方は非常に少数となってしまいました。一部の眼科医さん、東京近郊ではお茶の水の井上眼科さん、田町のかじた眼科さん、新浦安のかわばた眼科さん、これらの眼科医さんは非常にまじめに屈折矯正に取組んでらっしゃいます。皆さんももしもお困りでしたら頼ってみて下さいね。
でも、これからご紹介する斜視の矯正を眼鏡でというお話しは、もしかしたらそのご高名な先生方もご存知無い手法かもしれません。一般に眼鏡屋さんは斜視の量はディオプターという単位で表し、お医者様は角度で表現します。斜視は斜位のずれの大きい物、と言い切ってしまうのは実は危険で、ずれが少なくとも斜視になっているケースは散見されます。この少ないずれは眼科医さんでも測定出来て、場合によっては斜視を矯正する処方箋が出せる眼科医さんもいらっしゃるでしょう。これは先ほど挙げた三つのクリニックの先生でなくとも斜視矯正用の処方箋をだせるお医者様は数多くいらっしゃいますが、そのお医者様にも今回の記事は読んで頂きたいなと思って今書いております。
斜視は視線のずれだと説明しましたが、その大小だけが斜位と斜視を区別させる要因とはならない、ここまではついてこれますか?そのずれの量が小さい物は眼鏡で、更に具体的に言うとプリズムという三角の形状をしたレンズを使って矯正していました。でも大きなずれの斜視の殆どを今までは手術で対応していました。それをレンズメーカーさんのご努力により眼鏡でも随分対応できる様になりました。ではどの程度まで斜視は眼鏡で矯正出来る様になったのでしょう?
ここはまずはビジュアルで解説致しますね。
40代前半のこちらの男性はご覧の様に右目が大きく耳側に開いています。これを専門的言うと右眼外斜視という状態ですね。ディオプターで言うと44D程度と僕のカルテに書いてありました。
続けて、斜視矯正をした後のお写真です。
ちょっと写真がボケていますが、明らかに右目が鼻側に寄ってきていますね。これで左右合算で24ディオプタープリズム度数を入れています。
とこの様に眼鏡でも随分改善する様子が見てとれます。これはどんなレンズを使って実現出来たのでしょう?ご存知ない方からすれば魔法の様に感じるかもしれません
丸い状態ではこんな感じ、1㎝以上厚みがありますね。このレンズは近視+乱視+プリズムという度数が入っています。
削ると上から見ればこんな感じ耳側が薄く、鼻側が厚いのが見てとれますね。およそ8mm程度で仕上がりました。
前から見るとこんな感じ、特に厚みが目立つ感じではありません。
レンズも込みで14gでした。使用したフレームはコンセプトY-03です。
ここからは眼科医さんにお願いです。
今回は44D程度の斜視でした。眼科医さんはディオプターでは考えずに角度で考えると思うのですが、44Dを角度に直すと23.7495度、この程度なら充分に手術をせずとも眼鏡で矯正出来る可能性がある事を誰よりお医者様に知っておいて欲しいのです。ただし、プリズムで製作出来る度数の範囲はマイナス度数(凹レンズ)の方が強度のプリズムに対応しやすく、プラス度数(凸レンズ)の方が製作範囲が狭い事も知っておいて欲しい知識でもあります。その為、処方箋をご記入頂く前に、製作範囲をご紹介する眼鏡屋に確認する事をお勧め致します。つまり全てに10Dを超える度数の設定が出来る訳では無い事もご理解頂きたいのです。
次は眼鏡屋さんに報告です。
強度のプリズムの加工は僕も何度も失敗しましたが、その失敗談をご紹介いたします。まず二度摺りが殆ど出来ない事、撥水コートだと軸ずれのリスクが極端に高まるので通常のハードマルチコートの方がリスクが減る事、ただし、撥水コートでも軸ずれ防止のリスクを殆ど無くす事も最近は出来る様になってきました。そのテクニックとも言えないコツは両面テープの粘着力を最大限に活かす為に「寝かす」こと。つまりレンズ面とワイドカップ(NIDEKさんの場合は水平方向のみフレキシブルに可動するタイプがあるのでそれがお薦めです。上下にも動く物もありますが、それは上手くいきませんでした。)に貼り付けた後に一晩おく事で撥水かつ強度のプリズムでも軸ずれは今のところ皆無なのです。
レンズメーカーさんにお願いです。
弊店では10年前から両眼視機能検査を実施し、プリズム処方に関しては積極的に取り組んでまいりました。そして10年前に比べてレンズメーカーさんの製作範囲は3Dまでが当たり前、という状態からは随分改善されてきました。また遠近両用等の累進レンズに比べて、単焦点レンズの方が製作範囲が広がっている事もまた事実なのですが、それでも今回の様な片目で12Dという強度のプリズムに対応出来ているのは、僕の知る限りでは日本では1社のみ、かつ屈折率も1.67のみでの対応になります。これを今後は各社からより高屈折率や多様な設計で、累進レンズでも選べる状態。それを僕は希望します。何故なら強度のプリズムの方は累進レンズの装用が現状は非現実的だからです。フレームを上手に選び、加工すれば今回のレンズも仕上がりでは8mm程度で仕上がりましたし、写真でも説明していますが、フレーム込みで14gで仕上がっています。重さも苦にならず、美観もそれ程厚みという面では損なわれず、斜視が矯正出来るというこの選択肢はもっと普及させるべきだと僕は思います。願わくば、ニッチかもしれませんが、この分野を皆さまが積極的に取り組んで頂く事で、斜視でお悩みの方々のQOLの向上にお役立て出来ると思います。どうか前向きにご検討下さいませ。
斜視の矯正を眼鏡でと上記の記事をご覧になり検討されている方へ
眼の位置をレンズを使って矯正するという耳慣れない提案を僕はさせて頂きました。一体どんな風に見えるのだろう?と心配されていることと思われます。僕もプリズムという度数を入れて眼鏡を装用していますが、斜視ではありません。ですから本当の意味では皆様のお気持ちを理解は出来ていない事もまた事実だと思います。でも2015年現在、開業より10年半程経過し、当初は恐る恐るだった斜視の矯正も今では幾分自信も出来て来ました。またその自信の源は誰よりお客様からの反応だったりします。人生初めて両眼視が出来た方は涙をながさんばかりに感動して頂けますし、元々一つに見えていた方が、何かしらの後天的要因により斜視になってしまったケース等は、元に戻ったとこれもまた喜んで頂いています。大きな眼のずれを強度のプリズムで矯正するという切り口は10年間で20件程、年に二回程の実績になります。これが多いのかどうかも不明ですが、それでもこの20件ばかりの少ない処方した方々のご感想は少なくとも皆さん喜んで頂いているという事はご報告させて頂きます。通常のプリズム処方ではほんの一部の方には合わないとか気持ち悪いという方がいらっしゃるのもまた事実なのですが、この強度のプリズムで斜視を矯正するという方法では違和感を口にする方は過去の例では皆無でした。その為、この事実をもっと世に知らせる必要があるのでは?とホームページの記事にさせて頂きました。
また斜視の矯正というとどうしてもお値段が高くなってしまう。そういった可能性もあるのですが、斜視のずれの大小と近視や遠視の度数によって使用するメーカーが変わってしまうのですが、弊社で用意している斜視矯正に対応しているレンズの価格は以下の通りです。
日本レンズ(1.67高屈折非球面レンズ UV400 撥水コート) =1組20.900円
昭和光学(1.67高屈折非球面レンズ UV400 撥水超硬コート)=1組44.000円
カールツァイス(1.67高屈折球面レンズ UV400 ハードマルチ)=1組66.000円
およそ過去の実例では9割の方は昭和光学か日本レンズさんで対応出来ていますが、実際にお客様の度数を見てみないと電話等のお問い合わせでは明確にお答えできない事をどうか御理解下さいませ。
作成費用としては
上記レンズ代金+フレーム代金 になります。
検査のみという形でも結構ですので、ご興味ございましたらご予約下さいませ。また視力測定検査だけ体感した上で、やはり止めたという場合にも検査費用は一切掛かりませんのでご安心下さい。
また度数だけ決定してレンズは他所のお店で買いたいという方もご相談下さいませ。
その場合には決定度数を書いた書類を書いてお渡しします。処方箋とは言えないのですが、その用紙の記入代金として
11.000円頂いております。
ただし、度数決定のみグラシアスで、他店でレンズをご購入の場合には、上記レンズメーカーとの取引があるかどうかの確認が必要になります。またフレーム形状が分からないとそもそもそのフレームに今回の様な強度のフレームがうまくはめこめるかどうかを判断する必要がございます。その為、出来れば、弊店にいらっしゃる前にまずはフレームをご用意頂く事をお勧め致します。その際にはお客様ご自身の瞳孔間距離とフレームPDが極力一致しているか、若しくは近似値になるよう、そちらのお店様に御要望として必ずお伝え頂けますでしょうか?またレンズ部は極力小さいタイプがお勧めになります。更に言えば、フレームのそり角という角度や角膜頂点間距離等も測定した上で、度数を再補正かける場合もございます。この様に様々な良い眼鏡を作ることを阻害する要因がお持ち込みの場合にはございます。ですが遠方の方で何度も足を運んでいられないというケースでは仕方がないのかもしれませんので、遠慮なくその旨お申し付け下さいませ。
では皆様どうかご検討下さいませ。また微力ながらも皆様のお力になれますよう、鋭意努力致します事をお約束させて頂きます。
2020/11/7(加筆修正)このblogを書いてからおおよそ5年、更に斜視矯正に関しては進化しており、遠近両用レンズでも強度のプリズムレンズが組み込めるようになりました。使用するレンズメーカーは東海光学さんで10△(プリズム)を超える度数でも製作が可能になっています。勿論全ての方には対応出来ないし、目を拝見してみないと分からないのですが、それでも対応出来る幅は広がったので、老眼世代の方もご安心ください。
opteria-Glassias(オプテリアグラシアス)
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-21‐1F
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