遠視の炙り出し成功。
2018/09/06
僕は、故南沢先生と秋澤社長というお師匠さんに眼鏡作りのいろはを
教わりました。お二人ともにバリバリのドイツ式の検眼で業界でも
有名なお方でしたが、その先生に言われた言葉で印象的なお言葉があります。
それはこんな言葉でした。
「伊藤君、10才までは眼科に任せなさい。
10才以下は眼鏡屋としての限界だ。」
こんなお言葉でした。その当時僕は駆け出しで、理解も浅く、取り合えず
両眼視機能検査の流れをルーティンにして覚えるのに懸命な時期でした。
ですから本当の意味で師匠の言葉を理解するには
随分時間がかかった事を覚えています。
それからすぐにお店を開業し、当然の様に僕のお店には老若男女問わず
ご来店頂きました。創業してから今は13年、でもオープンしてから
10年程は、10才以下の子供は一度眼科医の先生に紹介してから
眼鏡を作ることを繰り返していました。決して僕の独断で子供の眼を
判断しないこと、それを自らに課していたのです。
ところが、ここ数年、それでは対応出来ない事が増えてきました。
先日いらしたY君も5才で最近少し遠くが見え難くなったとご来店。
Y君とはもっと小さい時からお店でよく話をしていましたが、
活発で明るくて、そして優しい男の子でした。
ただ、ご両親の以前に発した言葉が僕はずっと引っかかっていました。
それは
「うちの子落ち着きが無いのよ。」
と漏らしていました。そもそもお子様でしかも男の子
落ち付きがある方が気持ちが悪いですが、それでも他の同年代と
比較しても、余程の差がないとご自分の子供を落ち付きがないと
評価はしませんね。だからきっと何かある。
いつか検査してみたいな~と僕もご両親に伝えていました。
そんなある日、
「うちの子見てください。」
とY君のご両親から、ご予約頂き検査する機会を頂きました。
早速検査すると
【簡易に測定出来る機械の度数(2018/7/13)】
RS-0.75 C-0.50 AX175 角膜乱視 C-0.75 AX176
LS+0.50 C-0.75 AX6 角膜乱視 C-1.00 AX1
右目が近視の度数+近視性乱視
左が遠視+近視性乱視=これを混合乱視と言います。
【裸眼視力】
R=0.7 L=0.8 両目で1.0
これだけ見ると問題無さそうですね。
でも実際に検査してみた上での僕の第一案は、
RS+1.50 C-0.75 AX175 プリズムベースイン1.00△
LS+1.50 C-0.75 AX6 プリズムベースイン1.00△
この度数で両目で1.2の視力でした。
この眼鏡をお渡ししたのが、7/末
それから一か月強時間が経過してご来店頂くとこんな度数に変わっていました。
【簡易に測定出来る機械の度数(2018/9/6)】
RS+1.00 C-0.25 AX178 角膜乱視 C-0.75 AX176
LS+1.00 C-0.50 AX1 角膜乱視 C-1.00 AX1
遠視の処方の原則は最高視力で最強度ですから、
ほぼ僕の前回の第一案はそれ程間違っていなかったことが
分かります。何故第一案と言うのでしょう?
それは僕の頭の中で結論に達していないと思っているからです。
結論ではなくて何でしょう?それは手探りだということです。
では今後はY君の眼はどうなるのでしょう?
これは神のみぞ知るというのが正確な表現だと思いますが、
敢えて傾向として言えば、二つに大別されます。
1~遠視が更に潜伏していて、もっと強い遠視の眼鏡が必要になる。
2~遠視が身体の成長とともに眼の奥行が増えていき、遠視が
減少していく。
ここから先は推論というか山勘ですが、
僕は2の遠視が減少していくことを予測します。
これの根拠は?と聞かれても困るのですが、何となくなんです。
最先端の科学や医学でもそうですが、まずはインスピレーションから
始まり、そして推論をたて、そして検証していく手順をふみます。
僕のやっている事は最先端医学ではありませんが、
それでも推論をたてて、検証していくのはそれらと何ら変わらないのです。
つまり人の眼を見るということは、それ程シンプルではなく複雑で、
そして計算通りにはいかない事を僕は示唆しています。
どうか、皆様もたかが眼だろ?と高を括らず、どうか自分や
ご自分の分身でもあるお子様の眼を真剣に考えてあげてくださいね。
壮大なことを言えば、日本が近視大国になったのは、
誰のせいでもありませんが、僕はシステムの問題だと思っています。
消費者や眼鏡屋も、若しくはお医者様だって、たかが眼だろ?
と馬鹿にして真剣な研究対象に考えていないこの現実が
近視が一方的に進行するのを放置する今の仕組みを自然と作り上げたと
僕は思うのです。今からでも遅くはありません。
どうか皆様、自分を、そしてご自分の眼をご自愛くださいませ。
若しも困った時には、僕らの仲間のお店を是非頼ってみてください。
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それではまたこのblogでお会いしましょう。
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