跳ね上げ式眼鏡から遠近両用レンズへ
2022/05/17
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今日は跳ね上げ式眼鏡を愛用頂いている方に、
それでもダメだよとご案内したお話です。
そもそも跳ね上げ式眼鏡って皆さんご存知ないでしょう?
こんなフレームです。
一番左の写真を見ると一見普通の眼鏡、でもフレームのレンズが収まる部分を
持ち上げるとこんな風に跳ね上げ出来るのです。
後ろからその構造を撮ったのが三枚目の写真です。
この跳ね上げ式眼鏡は単式と複式と二つに類別され、
用途も限定されます。では単式と複式の用途の解説です。
単式跳ね上げ式眼鏡:主に近視眼で老眼の方が、遠くも近くも見たい。
でも遠近両用レンズは怖いな~っとか、何らからの事情で
遠近両用レンズを使えない事情がある人がこの単式跳ね上げ眼鏡を
利用する事が多いのです。僕の記憶では遠視眼の人には不向きで、
遠視の方が遠視の矯正を外しても手元が見え難くなるだけだからです。
複式跳ね上げ式眼鏡:複式跳ね上げ眼鏡は、遠視でも近視でも使えます。
この場合に多いのはサングラスとの併用のパターンです。
例えば複式の表面のレンズにサングラスのカラーレンズを
内面の方に度付きレンズをいれて、無色の眼鏡と
サングラスを一本で使い分けしたい方に向いています。
例えば車の運転時にトンネルに入ったら暗くて見え難いなと思えば、
サングラスレンズを跳ね上げて視界から外すのです。
それでローライト、ハイライトの双方に良好な視界を提供出来ます。
今回は単式跳ね上げを使っていた方は、まさに近視眼で
跳ね上げた時の視界の端っこがおおよそ33㌢
つまり裸眼で近くに難が無いことになり重宝していたと
お話になっていました。
実際の度数はこんな度数を使っていました。
旧度 | R | -2.56 | -0.02 | 0 | 32.00 | 1.20 | 1.50 | |
L | -2.52 | -0.28 | 89 | 32.00 | 1.20 |
ここで僕は驚きます。
今回の事例では58歳のお方でした。
58歳と言えば当然老眼です。
老眼の方が、ほぼほぼ完全矯正値に近い度数で
視力を目一杯だして70㌢先のデスクトップパソコンを
注視していたそうです。
僕「目は疲れないんですか?」
っと聞くと、
お客様「夕方になると目は痛いし仕事をするのが嫌になる。」
っと答えられました。
そんな無理しなくても適当な度数調整をすれば、
もっと快適なのに…。僕は今回のご縁が遅かったことを
申し訳なくおもいました。勿論僕のせいではないかもしれませんが、
正しい情報がお客様に伝わっていなかったから、
このお方は老眼の目に鞭を打つかのように、
目を酷使し、生活の質を下げ、労働生産性を下げていたのです。
こんな事が日本全国で巻き起こっているのが現実です。
では跳ね上げ式眼鏡に適している諸条件を列挙しましょう。
①適度な量の近視である事。
②左右の度数差がミニマムであり、理想は皆無である事。
③乱視量がミニマム、若しくは理想は皆無である事。
実はこの時点で該当している人はほぼほぼ皆無なのが実情です。
以下は東海光学から提供された統計データーです。
81.9%の方が左右差があります。
こうした左右差があると何がいけないのでしょう?
それは調節バランスの左右差が生じますし、
調節バランスの悪化は明視域の左右差を生じさせ、
最終的に両眼視を阻害します。
つまり下手をするとご自身は両目で見ている気がしていても、
実は片目で見ると片目はその距離が見えていないなんて事が
起こりうるのだとご理解下さい。
一例を挙げてみましょう。
RS-4.00
LS-2.00
この程度の左右差は普通に存在します。
ではこの方が裸眼になると明視域はどうなのでしょう。
R眼の遠点:25㌢
L眼の遠点:50㌢
この場合に例えば33㌢で読書をしたとします。
すると
右目は明視域から外れてしまっています。
左目はピントの調節の力を使ってみています。
すると目は片目だけピントの調節を入れられないので、
左目がピント調節をすると両目共に力を入れてみる事になり、
右目は更に見えなくなります。
このように実は条件としてかなりニッチな跳ね上げ式眼鏡ですが、
それでもとりあえず、ちらっと見る程度なら問題なく使えるでしょう。
例えば釣りのシーンで餌をつける時だけ跳ね上げる。
こんなシーンでは本当に便利に使っていらっしゃいます。
跳ね上げた状態で手元を短時間見るような用途には向いています。
乱視があると近方視した時の視力が維持出来ないので
それもお勧めしません。手元をしっかり見たければ
乱視矯正も入れるべきです。
では適度な量の近視である事っていうと、
これはケースバイケースなのですが、
S-2.00~S-3.00くらいの人がお勧めです。
これでおおよそ50㌢(S-2.00)から
33㌢(S-3.00)程度の視界の端=遠点になるのです。
そしてどんな老眼が進行した人でも
多少のピント調節機能は有しているので、
例えばS-2.00の人が裸眼33㌢を見る時には
多少のピント調節を入れてみれば視物は明視出来るのです。
ふ~む、実はここまで長々と書いてきたことが
余談だったりして、本題は老眼の人が1.5の視力で
70㌢を長時間見続ける事の危険性を訴えたかったのです。
その危険を回避する為に
僕は以下の度数で眼鏡を提案しました。
両眼解放 | R | -2.00 | -0.25 | 15 | 61.0 | 2.0 | ||
L | -2.00 | -0.25 | 85 | |||||
暫定度数 | R | -1.00 | -0.25 | 15 | 1.25 | 0.6 | ||
L | -1.00 | -0.25 | 85 | 1.25 |
このように左右差はなく、乱視も弱く、裸眼で行けるパターンでした。
それでも先ほどの度数では70㌢は堪えるのです。
だから僕は遠くの視力を0.6に設定し、
更に手元まで明視したいというご要望で+1.25の加入度を設定しました。
この度数設定であれば、
跳ね上げる必要すらありません。
跳ね上げもあまり頻繁だと
ロスですからね。
仕事の多くはロス退治ですが、
そのロス退治を逆行するのが、
場合によっては跳ね上げ式眼鏡だという事です。
一方、複式跳ね上げ眼鏡で遠近両用レンズの様な使い方も可能です。
例えば、
外面に+1.00を足しておけば、
先ほどの完全矯正値に+1.00をたして0.6の視力になり、
モニターが楽に見えるようになります。
遠くを見たい時には跳ね上げるのです。
次は
外面に-1.00を足しておけば
先ほどの処方値S-1.00に更に-1.00を
付加してS-2.00になり遠方が明視出来ます。
このやり方だと左右の度数差と乱視を
加えたバランスを最初から整え、外面のレンズで焦点距離だけを調整する事が可能なのです。
これが実は有効で、非常に便利にお使いいただけます。
単式と複式の組み合わせで
様々なやりようがあるという事を言いたくて
つらつらと書き連ねてみました。
それではまたこのブログでお会いしましょう。