技術革新から産地の未来を読む

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眼石祝応のBLOG

技術革新から産地の未来を読む

2021/08/12

本日のblogの難易度【★★★】

けさの体重は76.1キロ。

今朝のYouTubeチャンネル登録者数661人。

 

今日の記事は一見関係なさそうな

眼鏡業界の内輪の話ですが、

実は皆様の暮らしとも密接に関わっているお話ですので、

長文ですが、是非ご覧になってみてください。

 

久々に以下の記事のタイトルを見て「お!」っと思いました。

 

3Dプリンターで金型成型

 

ところが内容を読んでみるとがっかり半分、期待に半分。

先ずはがっかり要因としては、コスト増になってしまう事。

 

期待に半分とは、3Dプリンターは技術革新が目覚ましく、

年々コストは下がり、プリント速度も高速化しています。

つまり現状はコスト増要因だったとしても、

今後はコストが劇的に下がる可能性もあるのかな?

っと思っているので期待もしています。

 

そもそもこの金型を分業制でやっている事で、

日本製眼鏡は中国にやられた一因だと言えます。

中国の工場は広大な工場用地と潤沢な人的資源をベースに

一貫生産体制を築き上げ、世界の三大産地に名を連ねるまでに発展しました。

 

中国のメガネ産業黎明期には日本の企業が

中国に支社として進出するも、

様々な、妨害で中国の支社が機能せず、

 

結局撤退、撤退した後に日本企業で勤めていた技術者を採用し、

純中国の眼鏡工場が出来上がる。そもそも、最初からそのシナリオだった

可能性もありますが、それにしても中国に進出した日本の眼鏡関連工場の

多くが辛酸を舐めさせられた事は間違いありません。

 

中国は一貫生産、

 

日本は分業制、

 

中国は金型も内製、

 

日本は金型は外注。

 

こんな差異があり、デフレ経営の一途をたどるここ数年では

一貫生産での低コスト化で、廉価製品のシェアをほぼ中国が独占するになり、

日本の眼鏡産業は、原則高級品に留まり、産地の形を成していると言えます。

 

僕はデフレ経営は行き詰まるし、今後は成熟社会が訪れると思っています。

中国が世界第二位のGDPを誇るとしても、

国民一人当たりの総生産額はまだまだ、アメリカや日本に及びません。

 

その中国の国民一人当たりの総生産額が先進国と同等になった時の未来を

僕らは見据える必要があります。その時に中国は廉価製品だけを作っていても、

自らの暮らしが潤わなくなるのか、廉価製品のシェアを100%近く有していれば、

廉価製品だけを作っていても、問題ないのか、

従業員の豊かな暮らしを担保出来るのか?

 

それは今後の経過を見ていく必要があると思いますし、

僕には結論めいた答えを出すにいたる根拠が存在しません。

 

ただし、大きな戦争がなく、中国が世界と仲良く貿易していく未来があれば、

それは何年なのか、何十年なのか不明ですが、いつか中国も本当の意味で

先進国の仲間入りをします。その時には中国の一人当たりの所得は日本人並になり、

それは工場経営の観点からすれば、コストアップ要因になります。

 

その時代が来た時に僕らは今の体制で

眼鏡産地を維持していくことが可能なのでしょうか?

僕の周りの眼鏡産地の人は10年以上前から後数年で産地は終わりだ~っと

悲観的な未来を予想する人が多いのですが、

 

10年経った今も眼鏡産地は細々と継続しています。

特に近年はイタリアの大手、

ルクソティカが鯖江で眼鏡工場を買収し、

自社の高額商品の拠点として

職人を雇用し、産地を活性化させています。

 

僕は鯖江との関りが出来た当初から、数百ある鯖江の工場を5つか6つの

企業群に集約させ、効率的な経営をするべきだと思っています。

それをしないと産地が産地として継続出来ないと思っているからです。

 

産地で生じている問題は僕なりには二つの問題点に集約されます。

それは以下の通りです。

 

①高コスト問題(中国とは比較にならない程の高コスト。)

②事業継承問題(後継者不足で廃業に追い込まれる。)

 

①の高コスト問題は、そもそも鯖江や鯖江周辺の市に点在する眼鏡関連企業を

まとめて拠点を作る事で④物流コスト、⑤経理等事務的コスト、

更にいくつもの企業を経る事で生じる⑥中間マージンコストをカット出来ます。

この④~⑥のコストカットにより利益を出しやすい構造になります。

 

②事業継承問題も、あるスポットの作業「だけ」をする零細企業にとっては、

それ「だけ」をやらせて下請けの更に下請けという状況下では非常に労働生産性の

低い職種となっています。これを集約しラインを形成する事で、職人は多能工としての

スキルを求められます。一人で複数の作業をこなせる様になります。

 

これは弊害もあり、例えば一日バフ掛けという研磨だけをしていた人に

他の作業がそもそも出来るのか、更に多能工になった瞬間に仕上がる商品のクオリティーが

下がらないと言えるのか?その問題点はありますが、例えばシャルマンさんは

既にトヨタ式ラインを組み、多能工を育てています。

 

そうです。ドラスティックに変化をさせる為には時間が掛かる事を

覚悟するべきなのです。多能工が圧倒的に足りていないとするのなら、

それは育成する観点が必要だと言う事。

 

更に言えば、先ほどの3Dプリンターの例を出すまでもなく、

数百ある眼鏡の製造過程は、その全てではないにしても、

年々無人化、若しくは機械化しています。

 

つまり、職人は一部の作業に留まり、存在すると言えます。

例えば溶接、例えば磨き、例えば最終組み立てと調子取り。

 

これはしばらく人の手を介する事でしょう。

 

さて、鯖江にも一貫生産の工場はないのでしょうか?

実はあります。それが増永眼鏡さん、そして前日したシャルマンさんです。

他にもあるのかもしれませんが、僕は良く知りません。

例えばプラスティックの枠を一つとっても、

フロント枠とテンプルは、業者が変わります。

 

僕がこの業界に入ってから、眼鏡工場の大型倒産を何社も目にしました。

鯖江での現実は、「一貫生産の工場から倒産していた。」のです。

 

この要因は複数あるとは思いますが、

一つは、セル枠とメタル枠の流行の波により

体力をそぎ取られていき、更にデフレ経営のあおりをくらい、低単価に導かれた事。

更に小売店が工場経営に乗り出さず、

 

どちらかと言えば、部外者をきどり、

工場に歩留まりも含めたリスクを押し付け、

工場をいじめに等しい圧で、苦しめた事も一因です。

 

また歴史的経緯を説明すれば、

 

中小零細企業が独占していたころはほぼほぼシェア100%日本製でした。

当時は眼鏡は高額商品で、小売店もしっかり利益を得ていました。

また中小零細企業には価格交渉力が無いので、工場側や問屋側で

適性かどうかはともかく企業活動が維持出来る利益が配分されました。

 

これが大手量販店が主流の時代になると、

小売店が日本製のフレームを扱っていても、

大手は多大な販売力を背景に、多額の仕入れを入れます。

それに伴い、小売店は価格競争力を手にします。

 

この結果低単価化し、産地から、

余力を奪い、最新の工作機械を導入する意欲も

資金力も根こそぎ奪われました。

 

更にユニクロやダイソーに始まったSPA時代の到来と共に、

日本の眼鏡業界の構造そのものが劇的に変わっていました。

 

中小零細眼鏡店は市場でほぼほぼ存在意義を失い、

大手小売店は、自社で商品を企画し、中国に直接発注を掛けるようになりました。

そこには鯖江が介入する余地もなく、ただただ産地は置いてきぼりを食らったのです。

 

ここで増々産地は苦境に立たされます。今まで主要な顧客だった

大手量販店が新御三家(ZOFF/眼鏡市場/)にシェア争いで敗れ、

ますます大手量販店の仕入れ額は目減りするのです。

 

勿論中小零細眼鏡店はその争いからも蚊帳の外です。

 

そして近年の新しい傾向としては、

大手の仕事を受けても駄目、そもそも大手は自社で直接中国と

取引をする。中小零細眼鏡店はバイイングパワーが無い。

 

それでは産地はどうやって生き残るのでしょう?

 

そこで六次産業化が産地でも始まりました。

自社で製造し、そして小売店を東京の一等地に建てて、

直接エンドユーザーに販売してくのです。

 

それを複数店舗展開するケースもありますし、

福井の組合が経営する291という眼鏡屋さんは既に

複数店舗展開しています。

小売店頼みの商売の終焉が見えた瞬間でした。

 

さてそこで冒頭の3Dプリンターによる金型技術の積み重ねは

例え一時的にはコスト増要因だったとしても、

今後の一貫生産かを若しも見据えるのであれば、

それはポジティブだと僕は言いたかったのです。

 

いかがですか?

 

全ての業種で起こっているかもしれない、

デフレ経営は、こうして産地や企業の体力を奪いました。

僕は創業当初からデフレ経営からの脱却を目指していました。

 

その結果僕は、仕入れ時に値引き交渉をしないという条件を

自らに課しました。それはデフレ経営下で多くの眼鏡店経営者が

大手も中小零細もこぞって仕入金額を下げて企業体力を上げるという

企業としての選択を採用してきました。

 

その結果が産地の疲弊なのです。

そしてそれが多くの業種で引き起こされました。

結果として沈んで行く船の様に

日本丸は凋落の一途をたどっているのです。

 

金は天下の回り物、僕は少しだけこの言葉に違和感があり、

金は天下に回「す」物だと思っています。

自らの意識が無ければお金は循環せず、内部留保に留まります。

 

これでは日本は技術革新も出来ずに、

国際競争力を失うばかりだと思っているのです。

 

だから僕は現代に即した効率的な経営を取り入れながら、

産地としての積み重ねは維持し、

その技術は継承されるべきだと考えるのです。

 

改革と技術継承の間に最適解があります。

先日のblogでお伝えしたように、

中道に答えがあるのだと僕は思うのです。

 

今日は皆様に関係の無さそうで、

実は全ての人に関係している日本という国の在り方を

僕なりの見解を交えてお伝えしました。

 

最後までお読みいただき感謝申し上げます。

それではまたこのblogでお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

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