眼鏡屋さんは何故新規参入組が多い?
2021/09/12
本日のblogの難易度【★★★】
今朝の体重は76.2キロ。痩せた♪
今朝のYouTubeチャンネル登録者数707人。増えた♪
今日はメガネ業界の構造を歴史も踏まえてお話したくなりました。
歴史や経緯から学ぶ点があるのではないですか?
と僕自身や皆様に投げかけたくなったのです。
そもそも日本では長らく、多少のローカルチェーン店網は構築しながらも、
中小零細眼鏡店が日本のマーケットを独占していました。
それは他業界から、参入しようとしても参入障壁が
高く立ちはだかっていたらからです。レンズを削れる職人は
昔は物凄い価値があり、時間をかけ修行して一人前に育っていく時代でした。
そこに機材の進化に伴い、徐々に参入障壁は低く、
他業種から参入しやすい業界になりました。
そして、今業界で飛ぶ鳥を落とす勢いの
ZOFFさんやJINSさんも勿論他業種参入組で、
業界でちょっと目立つ会社の多くが他業種から来た
人が多いのです。あ、因みに僕も他業種参入組なのは
言わずもがなでございます。
他業種から入ってきた人は何故、新しいマーケットを構築したり、
シェアを獲得出来たりするのでしょう?
それはそもそも普段やっている作業が例え改善の余地が有ったとしても、
見慣れてしまっていて問題に気づけないという人としての習性というか、
ルーチンであるが故の問題があります。
チェーン店でも前任の店長から変わっただけで
一気に店が変わる、それは良くも悪くも有りえる話でした。
ですから、業界外から入ってくると、
なんで今更こんな事してるのだろう?
っとか、こうしたらもっと上手く行くのに
なんて事が比較的容易く見つかります。
カルロスゴーンが日産でやった様に、日産のGT-RやフェアレディZを
残して日産の象徴的なブランドに使ったのも好事例でしょう。
元々日産にいた人達は、GT-RやZの価値に気づけなかったと言えますが、
外様が入ってくると、こんなに魅力的なブランドがあるのに
眠らせておくつもり?ってゴーン氏は思ったのだと推察します。
僕は、この業界に入ってきた時の印象も
忘れないように書き留めておきましょうね。
【次郎さんの業界参入時の業界に対する印象】
①なんてお客様の満足を考えない業界なのだろう?
②なんて素晴らしい仕事なのだろう?
とまるで真逆のポジティブとネガティブな印象を併せ持ったイメージでした。
メガネ作りの奥深さと難しさを思い知らされるのは
もっともっと後になってからで、メガネ業界にお世話になった当初は、
何しろ、顧客満足がおざなりで、それでも眼鏡を作るとお客様に感謝される
素晴らしい仕事。そんな複雑な思いが同時多発的に生じたのです。
では、大手の人達はそもそも何に魅力を感じて
他業種から参入しようと感じたのでしょう?
儲かるからと思ったからですか?
それもそうかもしれません、
でも多くの新規参入を決めた経営者は
業界の構造的原価率の低さに着目したと仰っていると
僕は複数回ヒアリングした事があります。
実際に、アパレルなんかに比べると
眼鏡屋さんてフレームやレンズの
原価率が低いと聞いた事があります。
つまり、粗利益が沢山とれるちょろい業界だから
参入を決断したという背景がどうやらあるようです。
僕は他社の原価率に精通している訳ではありませんし、
他社の原価率をいくらに設定しているなんてお話は
企業秘密だと思いますが、確かにアパレルに比較すると
原価は低いようです。
では何故原価率を低く設定し、
粗利を多くとる必要があるのでしょう?
それは複数要因があります。
①レンズに限って言えば度が合わない場合のレンズ交換分も原価計算する必要がある事。
②フレームもフィッティングしていれば破損してしまい、それの修理代金を原価に組み込む必要がある事。
③そもそもフレームもレンズも半製品で、製品化する為に、多くの手間を必要とする事。
④眼鏡を立派に機能させるべく職人を育成しようとすると、その教育費に多くの時間と手間が掛かる事。
これらの①~④が低原価率に留める必要性の理由としては考えられます。
僕は外食業にいましたから、外食業が低原価率なのは良く知っています。
外食の場合にも、食材を店舗や工場で加工する手間や設備が必要で、
その加工時間も原価計算するべきで、厨房なんてのは、
一歩でも動きを減らしてロス退治する必要性がある業種です。
タッパーの置き場所一つにこだわってお店作りをしていた事も
よくよく覚えています。
更に外食の場合には、食材ロスもあります。
賞味期限を超えた物は廃棄する必要性があります。
メガネの場合にはレンズが腐るとか、
フレームが置いておくだけで腐るとはあまり思いませんし、
少なくとも、食材程に急激には傷みません。
フレームは一回りしてデッドストック、
逆に価値が増す商材だって中にはある程です。
何しろ諸々の理由により原価を下げて
単価を上げざるを得なかった業界だということは
ご理解頂けたでしょうか?
ところが④の職人の育成の手間を機材の進歩で不要で、
誰でも作れるメガネにしようと計画し、
お店にしたのが量販店で、
その効率化の最たる物がプライスショップだと言えます。
そして効率化という名のもとに機能性という物が
まるで存在しないかのように、メガネが半製品であり
仕立てる手間が大切である事は忘れているかのように、
大手はマーケティングしていきます。
こんなフレームが出来ました。
このフレームは凄いです。
こんな設計のレンズが新発売です。
って人ではなく商材にフォーカスします。
ところが、実際にどんな優れた商材も炊き方を間違えたら台無しで、
僕らは本来炊き方を競っているという事実を
伝えられる人や会社が年々減っていき、
更に大手の広報戦略は年々緻密化していき、
中小零細の僕のような
本質を突いた意見というのは
大手のCMの前に吹き消されているのが現状です。
ですから、増々大手同士の競争は激しくなり、
更に中小零細企業は隅っこに追いやられていると理解してください。
そこに顧客満足や、メガネの本来の機能性なんて
切り口は僕に言わせれば皆無に等しいのです。
さて、そうやって低価格化を標榜して
参入した新規参入組も、年々高単価化していきます。
リピーターに対してサービスレベルが変わっていなければ、
それは、満足度は相対的に低下するからです。
つまり企業は僕も含めて常に進化する必要があるのです。
そこで企業経営者の多くは一つの事実にぶち当たります。
それは仕立てる人の手間の価値なのです。
ゴーン氏がGT-Rの価値に気付いたように
原点に立ち返るのです。そして眼鏡の場合には
人が大切だという事に気付きます。
ここで経営者としては三つの道を選択させられます。
⑤既存の商売を維持しながら、他の業態を開発して、
高単価高付加価値を狙う戦略と、
⑥徹底的にブルーオーシャンを探して他のマーケットに
進出して規模拡大を狙う道、
⑦更に言えば、業界のトップシェアを握って、
横綱相撲をする戦略、これは大きな変革をせずとも
地道に商品力を上げれば、劇的に売り上げ増にはならずとも、
経営としては安定するでしょう。
トップシェアを有していない企業は他に活路を見出すか、
高単価化する必要性があるという事です。
つまり最初は価格で勝負していても、結局高単価化せざるを得ないのは
どの企業も結局一緒で、価格を下げる「だけ」で満足度を獲得するのは
ほんの一瞬、その後は、商品の品質を上げる企業努力を続けなくては
決して企業が継続的に発展する事は有りえないのです。
そして今日のblogで一番僕が言いたい事は、
多くの大手経営者様には、
どうかメガネの本質=仕立てる人の価値
から逃げないで欲しいという事です。
このblogを読んでいらっしゃる一般ユーザーの方は、
どうか、大手のマーケティングに騙されないで欲しいし、
本質的な知識をどうか身に付けて頂きたいと切に願います。
腕の良い眼鏡士に仕立てて貰ったメガネが
皆様の暮らしと密接に結びついているのです。
今日はこの辺にしておきますね。
それではまたこのblogでお会いしましょう。