眼鏡屋が考える白内障

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眼鏡屋が考える白内障

2021/10/25

本日のblogの難易度【★★★★★】

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さて、先日いらした方は右目だけ白内障で濁った視界が気になる。

とご相談にいらっしゃいました。実際に視力を測定してみると

 

【裸眼視力】

右目=0.3

左目=0.1

両眼=0.4

 

でした。これだけ見ると右目が見え難いという主訴の意味が

分かりませんよね?では実際に完全矯正値で視力を測定してみると

 

【両眼開放下完全矯正値時の視力】

右目=0.8

左目=1.0

両眼=1.2

 

っとこれもそれ程悪くない測定結果です。

ところが、両眼開放下でレッドグリーン視標を

見させると明らかに右目で見ている方が暗いと感じるようです。

 

健常な目であれば、上の6と9と

下の8と3が同じ明るさや黒の濃さで見えます。

ところが片目だけ白内障が進行してしまうと

片目だけ、つまり6と9「だけ」が暗く見えてしまうのです。

上図の様に見えていて、明るさや明度の違う画像を重ね合わせる事に

ストレスや時に疲労を感じ、更に違和感を覚えるのです。

 

そう、人は両の眼で物をとらえ、二つの目でとらえた画像を

重ね合わせて物を見ています。二つのカメラの視差を利用して

遠近感や立体感を得ています。

 

これを両眼視と言います。

 

両眼視にも複数の階層構造のようなレベルがありますが、

高度に機能させる事で精密な立体視を獲得できます。

 

そして両眼視や立体視を阻害する要因として

 

①視力差

②大きさの差

③明度の差

④形の乱れ

⑤色の差

⑥斜位や斜視等目線のずれ

 

このように様々な両眼視の成立要件がある訳です。

そして今回ご相談にいらしたお客様は、

明度や視力の差を訴えていたのです。

 

更にその不満を増大させる要因として、

今回は右目の利き目から視力低下であり、水晶体の濁りが発生しました。

メインに使っている目から濁りを自覚するのですから、

それは不満としても強く感じる事でしょう。

 

ここでこのお方は白内障対策として

片目だけ眼内レンズを入れる選択が真っ先に浮かびます。

 

では眼内レンズを入れる時に、

どんな状態に持っていけば良いのでしょう?

 

実はここに大きな分かれ道が存在します。

 

一つ目は、

 

①見え難い目をしっかり遠くに合わせて調整する。

②左目が近視なので、そこに合わせて、近視状態にして

左右の度数差を無くす。

 

ではこのお方が今どんな眼鏡を掛けていて、

どんな屈折異常があるかを見てみましょう。

屈折   SPH CYL AX ADD PD 片眼視力 両眼視力
他覚 R -1.25 -1.00 87   32.50 0.30 0.40
L -3.00 -0.25 95   32.50 0.10
角膜乱視 R   -0.75 14 色覚特性 8  9  
L -0.50 14 5  2
旧度 R -0.47 -0.50 88   32.00    
L -2.00 -0.02 95   32.00  

 これを見ると左目に中程度の近視が存在します。

この状態で右目だけ近視を無くしたとします。

すると以下のような屈折異常の左右差が発生します。

R眼=±0.00

L眼=S-3.00

 

左右の度数差が±2.00D(ディオプター)以上の差を

 

不同視と言います。

 

人為的に不同視状態を作ることを意味しています。

そしてこの後天的かつ人為的な不同視が

さらなる悲劇を生み出す可能性がある事をご紹介したいと思います。

 

先ほど両眼視の成立条件をお話しました。

後天的かつ人為的に不同視を生み出した時に

大きなトラブル要因となるのは、

 

左右の目でとらえた像のサイズが変わり、

それを不等像視といいますが、この不等像視により、

両眼視が阻害される場合が本当によくよくあるケースなのです。

 

ですから、今回のケースでいえば、

遠くバッチリ(①)ではなく②の左目に近づけるというのが

正解だと僕は思っています。すると遠くを見る為には

遠く用の眼鏡が必要になります。

 

そもそも、今回のケースで片目だけ遠く用に合わせて調整すれば、

右目で遠く、左目で近くとモノビジョン状態を作ります。

 

モノビジョンとは、遠くと近くを片方の目に仕事させる事で、

老眼でも遠くと近くが見える状態を作る事です。

眼鏡でもこれをやる事は実はあります。

 

ですが僕のお店ではこのモノビジョンは

最後の手段と思っています。

 

何故ならモノビジョンは両眼視を阻害するからです。

 

このように実はケースバイケースで、

白内障対策としての眼内レンズの度数設定は、

非常に経験や知識を求めるケースだと言えます。

 

ところが、屈折矯正に精通していない眼科医の先生は、

この不同視に伴う、不等像視のリスクをご存じなく、

安直に遠くが良く見える手術をするケースが散見されます。

 

どうか皆様は、この白内障になった場合には、

最低でもセカンドオピニオンをとり、

相談することをお勧めします。

 

では僕からのオススメとしては、

どんな度数設定になればよいのでしょうか?

 

RS-2.00

LS-3.00

 

これで遠くと近くが見える遠近両用レンズで作れば両眼視は

維持したまま、快適に眼鏡をお使いいただけるでしょう。

左右同じ度数(S-3.00)でもよいのかもしれません。

 

また、老眼世代は、第二次変動期(40~46歳以降)であり、

眼内レンズであっても近視は減少し、弱度化します。

 

右目でいえば、

 

RS-2.00(現状)

 

RS-1.75(二年後の平均値)

 

RS-1.50(四年後の平均値)

 

と近視は左右共に減少していき、

病気にならないことを前提に、

裸眼視力は改善します。

 

改善するどころか、場合によっては近視がなくなり、

その後遠視になることもあります。ですから、それを見越して、

多少の近視状態を敢えて選択する場合があると理解してください。

 

遠視になると何がまずいのでしょう?

 

それは手元が見えなくなるだけでなく、

遠くを見る時にピントが合わなくなり、

どこにもピントが合わなくなります。

また、近視のレンズ(凹レンズ)には

ピントを助ける効果がありますが、

遠視のレンズ(凸レンズ)にはピントを邪魔する効果もあります。

この邪魔を無意識に脳が認識し、ストレスを感じます。

新しい環境に合わせたピントを

調節するようには簡単にはなっていないのです。

 

だって生まれてからほぼ近視で来たのですから、

近視の恩恵を受けて生きてきたのに、

突然恩恵がなくなり、更にピント合わせを邪魔されるのです。

これは溜まったもんではありません。

 

強度近視の方がレーシック手術をして

不満を覚えるのは主にハログレアだと思いますが、

一方、この突然ピント合わせをしっかりしなさいと

白内障の術後に突然言われるのもパニックに陥りやすく、

レーシック手術と同様立派なリスクだと言えるでしょう。
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近視であれば、少なくとも近くはそこそこ見えるのですから、

わざわざそのプラスの効果を投げ捨てるなと僕は言いたいのです。

 

一昔前ならいざ知らず、今はデジタルデバイスばかり見ている

時間が増えていますから、若干の近視状態の方が何かと都合が良いのです。

 

今回のお客様もまずは眼鏡でしっかり調整し、

その後それでも満足頂けなかった場合には

手術を検討しているとおっしゃっていました。

 

良いお医者様とのご縁を願うばかりです。

それではまたこのblogでお会いしましょう。

 


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